2023年7月12日

脱却

 
「自分よりも苦労している人はいくらでもいる」と思えるようになったのは、逆説的だが「これ以上ない」と感じる苦痛を経験したあとだった。

どうしても引受けねばならぬものがこの世にはあり、それが平気で自分の外からやってくる。
いや、何事によらずすべては始めからそういうものだったのだ。
そんな世界のありのままの姿を体感し、ようやく盲目から目覚め人の世の入り口に立てた。

自分の恵まれた点に目がいかないうちは、他者の戦いに目がいくことも決してない。
「私よりも苦労している人はいくらでもいる」と言葉では知っていても、そもそも人のことなど眼中にないという状況はよくある。

盲目は打破しねばならないものなのか、の議論もあろう。
ただ思うに、盲目を切り開いて進む道こそ人間として生まれた意義を最大に満たしてくれる、人間にとって最も贅沢なプロセスである気がする。



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